物語や伝承、童話によく登場する魔女に焦点を当てた一冊「魔女は真昼に夢を織る」。前半が短編小説(3編)、後半が魔女に関する評論文となっています。

 前半の小説が面白かったです。3編が3編とも。
 「魔女の森」。永遠の若さを願ったがゆえに異形の魔女と化した美少女のお話です。長く生きたがゆえに人らしい感情を失っている彼女・マーリンが、捨てられた赤子を戯れに拾い育てたのがまず意外。赤子は二人ともそれぞれの理由でマーリンから捨てられるわけですが、この赤子が彼女の呪いを解くきっかけになります。
 感情を失いながらもなぜ赤子を拾ったのか、そして普通の人間に育っているのを見るに、実はマーリンは人らしさを失っていないのではないか、とも思うのです。二人の生活、ちょっと気になります。

 「氷姫」。純粋で優しく育った末姫が、裏切りを受け魔物に魂を売り渡し、その見返りとして最強の女王になるというお話。
 このお話でも、末姫の呪いを解いたのはやっぱり彼女が拾った赤子なんですよね。魔女も女性である以上、母親、もしくは母性というものと切り離せないという暗示?それとも、魔なるものの対として、純粋と思われる子供を挙げているだけ?

 で、最後の「ガラスの靴」。これがまた傑作!
 シンデレラのお話を、彼女のいじわるな継姉の視点で綴るというもの。この継姉、まずはそこまでシンデレラをいじめていない、と前置きした上で、シンデレラとの思い出を語ってくれます。面白かったのは、シンデレラに登場する魔女は、このお話では継姉なんです。しかも魔法使ってないと。
 シンデレラ自体は純粋すぎてときに危うい少女として継姉は捉えているんですが、生まれ持った純粋な美貌を妬みつつ、何だかんだいってシンデレラを可愛がっている継姉の様子が見て取れて、とても素敵なお話でした。

 後半の評論部分は、様々な魔女・魔法が登場する作品を挙げつつ論じてあります。
 その中にハリー・ポッターシリーズがあるのが、なんだか現代だなあと思いました。



魔女は真昼に夢を織る
  • 松本祐子
  • 聖学院大学出版会
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