アルパカの化粧入れ人魚の本

2012/09/26

とらわれちゃったお姫さま

 御伽噺やゲームの話では、お姫様はドラゴンにさらわれ、とらわれの身になるのはあまりにも日常茶飯事です。やがて名だたる王子や騎士、あるいは勇者がお姫様を助け出し、二人は結婚して大円団。
 しかし、ここに一人、風変わりなお姫様がいました。お姫様らしく振舞うことが大嫌いなシモリーン姫は、両親が強引に決めた結婚から逃げ出すために、なんと自らドラゴンの元へ「とらわれに」行ったのです!

 そんな、前代未聞なお姫様の物語「囚われちゃったお姫さま」。
 魔法の森シリーズと呼ばれる4部作の1冊目ですが、これ単体でも十分楽しめます。
 このシリーズ、話は繋がっているものの、毎回主人公が異なりますからね……。

 とにかく自分の運命は自分の力で切り開いていく!と勇ましいシモリーン。料理をこなし、ラテン語を読み、魔法のアイテムを扱い……優しく賢明なメスの龍カズールのもとで暮らすことになります。
 龍の暮らしが垣間見えるのがまた、面白いのですよね。洞穴の中にちゃんとお姫様をとらえておくだけのスペースがあったり、大量の宝物があったり。シモリーンはそれを整理するためにとカズールに引き取られることになりますが、徐々に今までのお姫様と違うシモリーンは、カズールに気に入られ、信頼を受けていくのです。

 他の龍に囚われたお姫様も登場。中でもアリアノーラ姫は可愛らしくていいですね。こちらは正真正銘のお姫様といった感じ。可愛くてかよわくて守りたくなりますが芯は強い。

 あとこの物語、ところどころにコミカルなやりとりがあるのもいいですね。
 たとえばランプの精を間違って目覚めさせたことがありました。精霊は、目覚めさせたシモリーンを殺したくてしょうがない。しかし「死に方は選ばせてやる」と尊大に言い放ちます。それに対してシモリーンはあっさりとこう返すのです、「年取って寿命で死ぬ」と。
 その発想はなかった!

 シモリーン姫の行動も、怪しい動きを見せる魔法使いたちとの駆け引きも、ドラゴンの暮らしや文化も、見所豊富な一冊です。


囚われちゃったお姫さま
  • パトリシア・C.リーデ
  • 東京創元社
  • 2100円
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misano414 at 06:02│書籍/小説(長編) 
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