女心と秋の空カーリル

2012/10/24

おさがしの本は

 図書館のレファレンス・サービスをご存知ですか。
 調べ物のお手伝いをしてくれるサービスで、私も仕事で何度もお世話になりました。あくまでお手伝いなので、調べるのは自分で為さなければなりませんが。

 今回ご紹介するのは、レファレンス・サービスを巡る物語「おさがしの本は」。

 物凄く論理的に物語りは進んでいきます。本を探すという行為一つとっても、依頼者の断片的な情報から主観的な要素を排除し、もしくは上手く客観的要素に変換し、探す。では主観的要素が全くないかというと、そうではなく、基本的には人と人の物語として、ふれあいの描写も織り交ぜられているわけで。
 推理小説のような、事実を淡々と探し出し結び付け論破する部分と、人と人の他愛ない会話や仕種など、その折混ぜ方が実に見事だと思いました。
 お恥ずかしながら、推理小説や評論を読み慣れていない私には、読んでいて疲れる物語でもありましたが。

 性格なのか物語上の都合か、とにかく主人公も、後に敵対者となる副館長も、論理的な話し方ばかりします。ヒロイン枠と思われる後輩職員も同じ。
 だからこそ、最後の一幕が印象に残りました。
 曰くー―

「パフェ二杯ぶん」
 沙理はゆっくりと隆彦へ顔を向ける。珍しいものでも目にしたみたいに何度もまばたきをしつつ、隆彦の目を見つめ、
「お断りします」
ふいに横を向いた。と思うと、きゅうに大人びた顔になり
「お酒にして下さい」
(290ページより引用)





おさがしの本は
  • 門井慶喜
  • 光文社
  • 1680円
Amazonで購入



misano414 at 06:01│書籍/小説(長編) 

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1. まとめ【おさがしの本は】  [ まっとめBLOG速報 ]   2012/10/25 16:01
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