灯子という少女(おそらく中学生)を主人公にした連作短編です。
 「夕暮れのマグノリア」。

 テーマは、おそらく「見えないからといっていないとは限らない」もしくは「世界は見えるものと見えないものでできている」。見えないもの、異世界のものが現実とたまに混ざり合いながら、日常が綴られていきます。

 毎回、灯子が主人公でありながら、キーとなる登場人物は異なる人たち。
 たとえば『真実のハート』では千夏が、『雪幽霊』ではきぃちゃんがといったふうに。連作短編なので、今までの物語に登場した人がキーになったり、逆にキーになった人が当たり前のようにそれ以後の話の中で日常に登場したりします。
 新しい友達の凛と、古くからの友達のきぃちゃんが、灯子にとっての親友になる『マーブルクッキー』が一番好きな物語です。

 『マーブルクッキー』のキーキャラクターはおばちゃんなんですが、その実、書名にもあるマグノリアなのではないかと。読む前はマグノリアって聖母マリアの敬称の一つだと勘違いしていたのですが、実際は木の名前でした。
 とうの昔に亡くなり、目には見えない夫からの愛に包まれて守られているというおばちゃん。何だかそういうの、素敵だと感じます。そう信じられるだけの強さもだし、マグノリアに仮託された想いもまた。

 ところで、全編通して、思春期のころにありがちな「仮想敵」の概念が登場します。
 ちょっとだけ違うことをしたために、周囲から共通して敵意をむき出しにされること。はじめ、凛がその標的となり、『雪幽霊』の頃にはみんなとうまくやっていたはずのきぃちゃんが標的に。
 しかしながら灯子本人は、それはフルーツバスケットにおける椅子に座れない人のようなもので、椅子は常に足りないけれど、いつも座れないわけではないと捉えています。
 仮想敵をどうこうではなく、そういうふうに受け入れている。その捉え方は新鮮であると同時に、生きるってそんなもんだよなあと、妙にリアルめいたものを感じました。


夕暮れのマグノリア
  • 安東みきえ
  • 講談社
  • 1365円
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