思春期の日常風景を切り取った物語が3編収録されています「晴れた朝それとも雨の夜」。

 『バースデーパイ』と『ホタルの基地』は、それぞれ男の子が主人公に向ける真っ直ぐな想いをまぶしく感じます。中学生の恋っていうと、どうも子供の遊びの延長のような印象があったのですが、なかなかどうして。当事者にとっては本物だし、真剣だし、何より私自身も中学生のころの恋を今の今まで続けているクチなのでした。特に『バースデーパイ』で耕平が言った嘘は好感が持てます。

 それらと全く違うように感じたのが『沢山さんの恋』。これ、恋が二重構成なんです。
 川島に惹かれていく主人公は、川島を知っている沢山さんとも仲良くなる。物静かな彼女に、主人公は川島に関して気付いたことや知ったことを話していく。
 実はかつて川島に惹かれ、歪んだ想いで”負け”てしまった沢山さんは、主人公の話を通して、目と耳を通して再び恋をしていく。主人公も、常に川島を考えるには沢山さんの存在を意識してしまいます。そのせいで、川島との距離が開いてしまって。
 最終的に沢山さんを切り離して、自分だけの恋をしていこうという結論を得ます。

 ところで川島のこの言葉が印象的でした。

ジワジワと兵糧攻めの城みたいでさ……後どのくらい持ちこたえられるだろうって……



晴れた朝それとも雨の夜
  • 泉啓子
  • 指定なし
  • 1470円
Amazonで購入