今回ご紹介する「オトラント城/崇高と美の起源 (英国十八世紀文学叢書)」。まったく別の物語が1冊に収録されていますが、私が読んだのは前半『オトラント城』のみです。

 オトラント城の城主の息子が、婚礼の日にいきなり亡くなったことから始まるどたばた劇です。
 どたばたと表現しましたが、コミカルな要素は一切ありません。権謀術数の世界が綴られ、自らの野心のために正気を失ったかのように見えるマンフレッドの行動が際立ちます。男子の後継ぎを欲しがるばかりに、息子に娶せようとしていたイサベラ姫に強引に関係を迫ったり、そのために長年自分に尽くしてきた妃を離縁しようとしたり。

 とにかくマンフレッドはパワフルです。始終怒鳴っています。読んでいるこちらまで何だか焦ってしまいます。ちっとも心休まる暇なかったのですが、実際そういう世界を綴っているので表現としては正しいのでしょう。
 同じぐらいパワフルであり、母親の思慮深さも受け継いでいるのが、マンフレッドの娘マチルダ。
 マチルダは強烈な魅力を以て周囲を魅了していくのですが……。

 本当に、どうなるのかまったく先が見えませんでした。
 はじめはイサベラの危機にはらはらし、続いて名もなき青年の器に驚き、マチルダの動きから目を離せない。あっという間に読み切ってしまいます。
 「女は天と夫(もしくは親)に服するもの」という妃の考え方に「そういう時代、そういう世界なのだな」と思ったり。昔の中国でしたっけ、生まれては父に従い、嫁しては夫に従い、老いては息子に従うのが女だって考え方。
 オトラント城の舞台はヨーロッパにある架空の城ですが、どこも女の扱いってそんなもんなんだなあとも思います。


[第4巻 ゴシック] オトラント城 / 崇高と美の起源 (英国十八世紀文学叢書)
  • ホレス・ウォルポール(オトラント城)_::_エドマンド・バーク(崇高と美の起源)
  • 指定なし
  • 3360円
Amazonで購入