ある日マンションにやってきた人の文化を理解し人の言葉を話す礼儀正しい熊と、主人公が一緒に沢にハイキングに出掛けるというお話です。しかして、2011年の東日本大震災を受けて加筆修正された「神さま2011」が本の後半に掲載されています。
 そんな、「神様 2011」。

 これを読んで思ったことは、放射線汚染などの非日常も、日常になっていくのだろうなと。
 私は東日本大震災について当事者でも何でもありませんけれど、この物語を読んで思ったのは、どんな変化があっても人は生きていくし、世界はなくならないし、それぞれの範囲内で妥協して毎日を生きていくということ。日常になっていくということ。

 身近における変化といえば人や町との別れが思い浮かびます。
 人と別れることは辛いことですが、やがてそれに慣れてしまう。時間は残酷だけれど、同時に祝福でもあるのかなと。
 この物語は、そういうことをつらつらと考えるきっかけになりました。

 そういうことはさておいて、登場する熊はとても魅力的です。礼儀正しく、何故か古い日本の文化を愛しており、魚を獲る腕も一級。『神様』においては獲った魚は開いて干して食べ物としてのお土産に、『神様2011』においては開いて干して思い出のお土産に、それぞれ姿を変えていくのです。


神様 2011
  • 川上弘美
  • 講談社
  • 840円
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