クリスマスを題材とした短編集で、殆どは恋の物語です。「クリスマス・ストーリーズ」。
 少なくとも日本ではクリスマスは恋の季節ですものね。「セブンティーン」「私が私であるための」など全6編が収録されており、作家もそれぞれ異なります。短編集というよりはアンソロジーと表現した方がしっくりくるかもしれません。

 一番好きなのは盛田隆二「ふたりのルール」。
 職場の上司と5年間にわたり不倫を続けているOLの物語ですが、どろどろした部分はなく、むしろ、このいびつな恋を続けていくために色々我慢をしながらも白石を心待ちにしている主人公がいじらしく思えてきます。一途な恋心は面映ゆくもあり。
 また、白石も主人公を気に入っており、相思相愛だから恋愛そのものはとても穏やかです。たまたま好きになった相手が妻子持ちであったというだけで。
 静かに穏やかに過ぎる不安定な恋の、何と切ないことか。
 魅力的だとは思わないけれど、ルールを作りそれを守り自制する主人公の気持ちに何故か共感出来てしまうのです。印象深く感じたのもそのせいかもしれません。
 冷静に考えれば、妻子ありながら職場の若い女の子に手を出すなんてどうかと思うんですが、せめて物語の中でだけ、そういうの関係なく純粋な恋心が続いていてもいいよねとも思います。

 他に、奥田英朗「セブンティーン」で綴られる母親の苦悩と、最終的に許し認めるその決断も、好きです。


クリスマス・ストーリーズ
  • 盛田隆二
  • 角川書店
  • 1575円
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