必ず花が登場する短編を27遍収録した一冊です。「花のようなひと」。

 短編というか、掌編といった方が正しいぐらい短い物語です。ページにして2-3p。どうやら『PHPカラット』という冊子に連載されていたようで、ただし27編のうち「ペットボトル」だけは本書の書き下ろしとなっています。

 花を絡めながら短い中に色々な人間模様が詰め込まれている感じがして、どの話も好きです。
 たとえば「バラの刺」では、些細なきっかけでそれまで敬遠していた先輩を身近に感じるようになります。苦手と感じるということは、それだけその人を見ているわけですから、小さなきっかけで感情が親愛に変わる可能性ってあるんですよね。
 ドラマティックなその動きは、プラスの感情からマイナスに展開することだってあるのですが、この物語ではプラスに動きます。

 「ペットボトル」では、繰り返されるルーチンワークの中で、ペットボトルが静かな存在感を放っています。世の中の専業主婦の苦労は判らないけれど、その残った形から何かまったく別の物を想像しようとする主人公。
 定型の生活の中で非定型のものを思い浮かべようとしている様子は正反対だけどやはりドラマティックだと感じます。


花のようなひと
  • 佐藤正午
  • 岩波書店
  • 1890円
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