今回取り上げる「サファイア」は宝石が登場する短編集で、殆どの物語は独立しています。よって、好きな宝石から読んでも構いませんが、私は始めから読みました。気に入った物語もそうでないものもありますが、特に好きなのは次の3つ。

 ルビー。誰でも彼でも受け入れてしまう鷹揚な老夫婦と、一緒に暮らす妹、その家に3年ぶりに帰ってきた姉の話。家の裏の畑のさらに裏には特殊な事情を持つ老人保健施設があり、そこに暮らす”おいちゃん”とのハートフルな交流が紡がれています。
 もうほんと、この交流が好きで好きで。
 実はおいちゃんにはとんでもない秘密があるのだけど、それを知った上で今の関係を崩さずに続けていこうと、お互いに決意している姉妹、やっぱりあの夫婦の娘さんなんだなあとも思います。

 次に表題作でもあるサファイア、そしてルビー。
 この2編、この本の中では唯一の連作となっています。はじめそれに気付きませんでした。さらに、ガーネットは、『墓標』という作中作がどれぐらい陰湿で評判が悪くて、それでも人を引き付ける何かを持っているせいで30万部売り上げたというくだりから始まります。まさかそれが、サファイアの主人公が書いた作品だなんて夢にも思いませんでした。

 そしてサファイアで主人公の彼氏の命を奪ったかもしれない3人の女のうち、2人からの答えがガーネットでは届くのです。長い長い時間を超えて主人公の「おねだり」は救われたし、3人のうち2人の女もそれぞれ救われた。その結果をただただ嬉しく思うのです。そしてサファイアでのチョイ役がまさかガーネットでは主要人物たりえるとは!
 ああそんな人いたなと、確かにいたなと、まさかの伏線でした。


サファイア
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