ライチュウのぬいぐるみ振リ返リマセン勝ツマデハ

2015/09/09

ネネとヨヨのもしもの魔法

 物語を読むこと、綴ることも含めて、世の中にはたくさんの「想像」もしくは「もしも」に満ち溢れています。しかし「ネネとヨヨのもしもの魔法」において、それらは禁じられています。
 そんな世界で生きる孤児ネネの冒険と成長の物語です。

 「想像」は、多くの場合、自分に都合のいいことが挙がるのではないでしょうか。「もしもお金がたくさんあったら」、「もしも美人に生まれていたら」、「もしも勉強をしなくてもよければ」等々。そういう自己中心的な「もしも」の結果、物語の舞台は大きな戦争を経験し、反省として「もしも」が封印されました。しかし、ネネは少しずつ「もしも」の力を得ていきます。それは、他者を思いやる力であり、必ずしも自己中心的なものではないと綴られている点が意外でした。

 さて、「もしも」の力を得たネネは、ずっと欲しかった両親を得ることになります。この辺、ファンタジーですね。あくまでも想像でしかなく、物語の終盤でその両親は失われてしまうわけですが、そのあとでも喋るカエルと生き別れの妹については失わなかった点、本当によかったと思います。
 「もしも」の力で過ごした両親との時間は、物質的には何も残さなかったけれど、精神的には確かに残すものがありましたと。記憶を残しましたと。
 大きな絶望はあるけれど、希望も残っており、読後感のよい物語でした。

 ところで、ヨヨ。
 書名にある割に、実際に物語に登場するまで存在を全く意識しておりませんでした。書名にあるぐらいだから、さぞ重要な人物だろうに……実際、重要な役割を持っているのですけれど、もう少し書名にも注意を払うべきだったかなと反省しております。


ネネとヨヨのもしもの魔法 (Hapworth)
  • 白倉由美
  • 徳間書店
  • 1728円
Amazonで購入



misano414 at 14:48│書籍/小説(長編) 
ライチュウのぬいぐるみ振リ返リマセン勝ツマデハ