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ゲーム、書籍、食べ物……何でもあり、かつ、プラス評価のみのレビューブログです。更新は毎週水曜日(と、たまに日曜日)。

カテゴリ: 書籍/小説(長編)

 魔王と勇者が仲良くするハナシ、最近よく見かけますね。
 この「魔王さんちの勇者さま」もそんなお話なのですが、買ったのはだいぶ前。なかなか読む機会がなく、ようやく読み始めたら面白くて一気に読んでしまいました。

 ライトノベルは世界観もキャラクターも魅力的なものが多いのですが、このお話はキャラクターがまず魅力的に思います。魔王ヴァイアスは人格者で温和な物腰が特徴である一方、あるときは冷酷な魔王そのものの姿を見せる。魔王の娘サフラは7歳に思えないほどの大人びたお姫さまだけれど実は年相応の可愛らしさを兼ね備えている。主人公は頼りなさそうに見えてやるときはやる。
 ま、主人公に関してはよくあるキャラクターではありますね。主人公らしいといえばらしい。

 主人公がいきなり異世界に飛ばされて物語は幕を開けるわけですが、異世界にいても元の世界が恋しいのかと思いきや、あっさりもとの世界を切り捨て、異世界のために動く主人公がなんだか好きです。郷愁との葛藤も悪くないですけどね。
 主人公に言わせれば、元の世界での記憶を忘れつつあり(おそらく召還された副作用)、それよりも新しく人間関係を築いた異世界のほうが自分にとって重要なのだと。
 遠くの親戚より近くの他人といったところでしょうか?

 最後、主人公はRPGの勇者にありがちな「死んでも何度でもコンティニューできる」という設定を逆手にとった方法で世界を救います。
 その方法もちょっと意外なものでしたので、気になる方はぜひ。


魔王さんちの勇者さま
  • はむばね
  • 徳間書店
  • 700円
Amazonで購入

 物語を読むこと、綴ることも含めて、世の中にはたくさんの「想像」もしくは「もしも」に満ち溢れています。しかし「ネネとヨヨのもしもの魔法」において、それらは禁じられています。
 そんな世界で生きる孤児ネネの冒険と成長の物語です。

 「想像」は、多くの場合、自分に都合のいいことが挙がるのではないでしょうか。「もしもお金がたくさんあったら」、「もしも美人に生まれていたら」、「もしも勉強をしなくてもよければ」等々。そういう自己中心的な「もしも」の結果、物語の舞台は大きな戦争を経験し、反省として「もしも」が封印されました。しかし、ネネは少しずつ「もしも」の力を得ていきます。それは、他者を思いやる力であり、必ずしも自己中心的なものではないと綴られている点が意外でした。

 さて、「もしも」の力を得たネネは、ずっと欲しかった両親を得ることになります。この辺、ファンタジーですね。あくまでも想像でしかなく、物語の終盤でその両親は失われてしまうわけですが、そのあとでも喋るカエルと生き別れの妹については失わなかった点、本当によかったと思います。
 「もしも」の力で過ごした両親との時間は、物質的には何も残さなかったけれど、精神的には確かに残すものがありましたと。記憶を残しましたと。
 大きな絶望はあるけれど、希望も残っており、読後感のよい物語でした。

 ところで、ヨヨ。
 書名にある割に、実際に物語に登場するまで存在を全く意識しておりませんでした。書名にあるぐらいだから、さぞ重要な人物だろうに……実際、重要な役割を持っているのですけれど、もう少し書名にも注意を払うべきだったかなと反省しております。


ネネとヨヨのもしもの魔法 (Hapworth)
  • 白倉由美
  • 徳間書店
  • 1728円
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 ひょんなことから異世界にトリップしたサラは、自分にそっくりだというサラサの代わりに時の皇帝陛下のもとへ側室として輿入れします。その先で、皇帝陛下に一目惚れしてしまった彼女は、持ち前の行動力を以て「皇帝陛下が幸せであるために」側室たちの仲を良いものにしようと奔走する……というお話です。「目指す地位は縁の下。」。
 何故かいきなり皇帝陛下の寵愛を得ていたり、異世界から来たという事実をすんなり受け入れる侍女が傍にいたりしますが、そこらへんはまあ、おいておいて。

 気弱そうだけど保護欲が駆り立てられるシャロン、大人しそうに見えて実は頑固なホノカ、皇帝の寵よりは知識を得たり好奇心を満たす方に興味があるアヤネの3人が、異世界出身ゆえ何も知らないサラサの心強い味方です。この3人の側室たちが、それぞれに魅力的な人物に描かれていて好感が持てました。
 特にシャロンの可愛らしさといったら!
 アヤネ姐さんの頼りにしがいも素敵ですけどね。

 甘やかされて育った気位の高いルリカに目をつけられ、彼女と小競り合いをしつつも、なんだかのんびり進んでいく物語でしたが、終盤でいきなり人が死ぬような凄惨な現実が突きつけられます。
 その結果、地位を失い後宮を追われるルリカ。しかし彼女が去る日、サラサとの間に何ともいえない絆が生まれたのは、せめてよかったことだと思いました。

 目指す地位は縁の下といいつつ、肝心の皇帝陛下とは順調に相思相愛なあたりどうなのと思わなくもないのですが、そこらへんはまあ、今作のメインではありませんしね。以下、続刊とのこと、今回登場しなかった側室にどんな人物がいるのか楽しみです。


目指す地位は縁の下。 (アリアンローズ)
  • ビス
  • フロンティアワークス
  • 1296円
Amazonで購入

 前に紹介した「蔦王」の外伝で、本編より後のお話になります、「瑠璃とお菓子」。2巻構成。
 今回の主人公は、母后陛下付きの侍女であるルリ。得意なお菓子作りがきっかけで宰相クロヴィスに気に入られ、彼の恋人になることに――。

 本編でのヴィオラント&スミレに勝るとも劣らず、クロヴィス&ルリの恋物語も甘く癒されるものでした。スミレたちに比べればいくつか危機もありましたが、それをちゃんと乗り越えて、2巻のラストで二人は結婚しました。

 ルリが可愛らしい点は本編のスミレと変わりませんが、違う点は、ルリが純粋で優しくピュアな人物である点でしょうか。
 言い換えればお人よし。その性質こそがクロヴィスを驚かせ、魅了したのでしょう。ルリの好人物ぶりは、読者から見ても素敵なものでした。
 また、ルリはお菓子つくりが得意というわけで、作中に次から次に出てくるお菓子たち。そのどれもが作っている場面から描写してあって、美味しそうなことこの上ないのです。
 その他、栗を食べる習慣がないルリたちに、スミレが栗の食べ方を教えている場面や、異世界(=日本)からピンクグレープフルーツを持ち込んでいる場面等は、単純に異文化交流の様子として面白く捉えました。

 お菓子からは離れるけれど、2巻の終盤でクラッカーを皆が鳴らしている場面も好きです。こちらも、スミレが異世界から持ち込んだもの。6個入りで100円均一で売られていたものだそうで、妙に庶民的で吹きました。

 本編と甘い雰囲気はよく似ていますが、主人公のルリが本編主人公スミレに比べクセのない性格なので、こちらの方が万人受けするような気がします。
 尤も、本編より先にこちらを勧めるのも妙な話ではありますが……。


蔦王―外伝 瑠璃とお菓子
  • くるひなた
  • アルファポリス
  • 1296円
Amazonで購入
書評

 ファンタジー世界の技術力は日本より劣っているものとして描かれることが殆どです。その代わり超絶的な剣の使い手だったり、魔法や神がかった力が登場するわけですが、では、そんな剣と魔法の世界に現代技術を持ち込んだら?

 というわけで、日本での記憶と、何故か技術的知識を持ち合わせたまま異世界に転生したミリアーナを主人公としたお話です。「ダィテス領攻防記」。

 物語の序盤でいきなり廃嫡された王太子マティサと結婚したミリアーナ、その日まで相手の顔を知らないという由緒正しき政略結婚なのですが、二人の仲が良いのがよかったです。とはいえ、甘やかというよりは、気心の知れた親友といった感じ。この距離感がとても好きでした。
 それでも話が進むに連れ、ミリアーナは順当にマティサに惚れていくようですが。

 ミリアーナとマティサの掛け合いが楽しかったです。全編通して。

 異世界の知識を使いファンタジー世界らしからぬ発展を遂げたダィテス領自体も好きでした。オーバーテクノロジーを持ち発展しながら、誰ひとりとしてそれを領外に持ち出していないのだから大したものです。絶対誰か持ち出しますよね普通!

 また、腐女子仲間だというクラリサとミリアーナの掛け合いも好きでした。あれもまた、主従超えて気心の知れた親友……いえ、この場合盟友でしょうか。クラリサ以外にも同じ道を好む女子はいるようですが、今回は4DWも運転してしまうクラリサの有能っぷりが素敵でした。

 この話、続刊も出ているようで。
 最凶夫婦がどこまで突き進むのか、楽しみでしょうがありません。


ダィテス領攻防記
  • 牧原のどか
  • アルファポリス
  • 1296円
Amazonで購入

 読み終えた最初の感想は「小公女」でした。貧乏貴族の娘ヴィオラは、結婚を許されない愛人との関係を続けたい侯爵に世を忍ぶ偽の妻としての契約結婚をもちかけられます。
 そんな物語「誰かこの状況を説明してください!」。

 実家の借金帳消しの代わりに、愛のない結婚に踏み込んだヴィオラは、嫁ぎ先で自由に暮らし始めます。何せ元が貧乏貴族の娘、自分だけ大量のご飯を食べるのはさみしいし勿体ないと使用人たちと一緒に賄いを食べてみたり、庭園で育てられたたくさんの花を摘んでは屋敷中の花瓶に飾ってみたり、手作りのファブリックを拵えてはそれを周りに飾ってみたり……果ては義母が嫁入り道具として持ち込んだもののそのまま放置されていたインテリアを引っ張り出して見事生き返らせてみたり!

 それまで、愛人の元に通い屋敷のことなど顧みなかった侯爵に代わり、自由に気ままに暮らすヴィオラのおかげで屋敷に元気が漲ってくる様が、とても読んでいて清々しかったです。
 その軌跡はやがて侯爵自身の目にも止まり、最終的に彼は愛人を捨てヴィオラに好意をぶつけるのですが、当のヴィオラはちっとも侯爵に恋愛感情を持っていなかったのでした。

 自分の思うままに好きに振る舞うヴィオラ、自然と周りを思いやるヴィオラ、貴族らしからぬ使用人たちと近い目線を持つヴィオラ。たいへん魅力的な人物です。周りが彼女に好感を持つのも当然でしょう。
 このお話には続きがありますので、そちらでは侯爵に好意を寄せていくヴィオラがみられるのでしょうか。

 それでも、ヴィオラの魅力は変わらないのだろうなあと思います。


誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~ (アリアンローズ)
  • 徒然花
  • フロンティアワークス
  • 1296円
Amazonで購入

 月をふと見上げてしまう人、月に何か想いを託してしまう人、気が付くと月に見惚れている人……そういった人々は、実は、太古の昔に月から地球に飛来してきた「月族」の血を引いているのだそうです。
 しかしそれを知らないまま、あるいは知っても信じないままに一生を終える人も多いとのこと。主人公もまた、そんな月族の一人であると知らされるのでした。
 そんな、月に魅了してやまない人たちの物語「月族」を紹介します。

 月には何ともいえない魅力があります。
 太陽と異なり、直視できるからこその美しさ。夜道を照らす皓皓とした灯りは、昔から多くの人が見上げてきたし、占いや神事にも欠かせない存在でしょう。多かれ少なかれ人々は月を意識しているし気にかけているのではないでしょうか。

 月族は物語の中にしか出てこない存在ですから、実際にはまずいないことでしょう。
 とはいえ、実はどこかにいるのかもしれません。この物語の作者も月族の一人なのかもしれません。
 なんだか『常野物語』を思い出しました。あちらは、常野の人々は世を忍んでいましたけれど。

 月族の中には、プラリネという昔の人物の話も登場します。不思議な魅力を持っていながら、流されるままに人生を流浪した、月族の王の血を引くというプラリネ。
 主人公たちの話より、作中で紡がれるプラリネの話の方が好きです。

 余談ですが、月族という名前と、表紙を見た時、真っ先にセーラームーンが想起されました。


月族
  • 今村恭子
  • 海竜社
  • 1361円
Amazonで購入

 異世界(=日本)から火事をきっかけにトリップしてきた女子高生スミレ。トリップした先で出会った元皇帝陛下ヴィオラントに見初められ、恋に落ちる――皇帝時代に修羅場を多く潜り抜けてきた結果無表情となってしまったヴィオラントの心を、スミレは少しずつとかしていくし、何の裏もなく心からスミレを溺愛するヴィオラントにスミレは恋愛を超えた安らぎを感じていきます。そんな二人の純愛物語「蔦王」を紹介します。
 
 3巻構成ですが、これといった危機もなく、安心して読めます。
 危機はないけれど出来事は色々起きるので、退屈もしませんでした。登場する彼らの周りの人物が、いちいち魅力的であることも一因でしょう。この物語に本当に悪い人というのは登場しないようです。安心して最後まで読めました。

 舞台が舞台なので、貴族の裕福な暮らしや、敬われる風景、名や血族、称号といった、お城とお姫様に欠かせない要素もこれでもかと詰め込まれています。
 そんな中で、マイペースさを崩さないスミレの言動はいちいち可愛らしく、スミレに与えられる環境はいちいち羨ましく、こういう世界に浸れることはとても幸せでした。

 スミレの可愛らしさに一番魅了されているのは読者である私なのですけど。

 最終巻である第3巻の末尾には、結婚後、子どもを得たスミレ&ヴィオラントの後日談が綴られています。これがまあ、また文句なく幸せで甘くて!癒しを与えてくれるよい物語でしたし、物語で明確に癒されたと感じたのはこれが初めてのような気がします。


蔦王〈1〉
  • くるひなた
  • アルファポリス
  • 691円
Amazonで購入

 いい先生に出会えるかどうかって、その後の人生を大きく左右しそうです。
 とはいえ、義務教育だけで9年間、高校進学すればさらに3年間、計12人もの先生と最低でも出会えるわけですから、とびきり悪い人に当たらなければそれで十分な気もしますが……。

 さて、「猫の足あと」に登場する先生こと、横山先生は、実はとてもいい先生なのではと思いました。

 まず、自分の受け持ちになった児童相手にいきなり、自分はオクテで、初恋をしたのは小学校5年生の時だったと告白すること。
 ちなみに受け持ちは小学校5年生。思春期がもうすぐ始まる頃、そろそろ異性にも興味がある年頃の子たちに、恋の思い出を話すなんて!つかみは万端すぎるではないですか。
 実際主人公も、その話をきっかけに横山先生に興味を持つわけです。

 次に、主人公たちのある”秘密”を知ってなお、それをみだりに周りに言わなかったし、糾弾もしなかった点。
 それどころか先生自身も興味を持ち、やがて飛び込んでくるんですから。

 そこまでいい先生だなあと思わせておいて、実は、先生が児童を思い通りに動かす授業こそ理想としていたことが語られます。
 でも、野生の子猫と出会い、その子と暮らすうちに、他者なんて到底自分の思う通りにいかないということを突きつけられるのです。その事実を割と素直に受け入れ、自らの成長の糧にする。横山先生、いい先生ではないですか。

 翻って、私が小学校5年生の時の担任はひどい人でした。
 が、今でもよく覚えているし、その先生に教わった大切なこともあるので、大人になって初めて判る「そんなに悪くない先生」だったのかもしれません。


猫の足あと (創作児童文学)
  • 今江祥智
  • 小学館
  • 1363円
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 表紙がカラフルで綺麗だったので手に取った一冊です。加えて、「幸せな恋のはじめかた」というタイトルも十二分に素敵。幸せな恋ですって。一体どんな恋なのでしょうね?

 実際読んでみると、恋のはじめ方ではなく、恋の終わらせ方に重きを置いた物語でした。二つ以上の恋を同時進行させることは、確かにとても難しいことです。幸せな恋を始めるためには、現在進行形の恋を終わらせる勇気と努力が必要ということ、その通りだなと納得してしまいました。

 そもそも、上司との不倫というこの先の全く見えない恋をしている状態から物語は始まります。
 主人公はその恋に見切りをつけ、新しい恋を選び取るわけですが、一方で、同じような恋でも構わないと上司を狙っている先輩社員も登場します。ここら辺、幸せの定義が人それぞれだという当たり前のことを改めて認識した次第です。
 その先輩が実際に上司と恋仲になったかどうかは判りませんけれど。

 また、恋を終わらせるために、ちゃんと上司にお別れを言った主人公ですが、それでも心のどこかで上司に惹かれていることは変わりません。
 一方、上司は未練たらたら。「はい、おしまい」で綺麗さっぱり切り取れるわけではないけれど、それでもおしまいを突きつけることは、けじめの一つとして大切なのでしょうね。


幸せな恋のはじめかた
  • 桜井亜美
  • 角川書店
  • 1404円
Amazonで購入

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